この記事ではいけばなに慣れ親しんでいない方でも簡単に茶花を生けられるように解説しています。

まず茶花とは何か、成り立ちなども含め、少し学ぶことから始めましょう。

茶花とは

茶席の雰囲気に合わせて季節のお花を使っていけられた花。
華美な装飾をせず、その花の自然の姿に近いいけばなです。

茶花のなりたち

茶道の文化が中国から渡ってきたのと同じように、もともと寺院などで仏像に花をお供えしていたことが茶花の起源と考えられています。

当時はお供えの花だったため、花を何本も使用した背の高い豪華な形をしていました。
お寺の大仏様の左右に、大きな蓮の置物が備えられているのをご覧になったことはありますか。あのような立派な花のイメージです。

それが茶の湯の成立とともに小さな茶室に取り込まれる頃には、その小さな空間に見合った1,2本の花を入れるだけのシンプルなものになりました。

「花は野にあるように」

茶の湯を大成させた千利休のこの言葉、聞いたことがありませんか。

この言葉は最もシンプルに茶花を表現しています。

「野に生えている姿のようにいけましょう」
「自然の花を尊重し、あまり手を加えずにいけましょう」

と解釈がされています。

さらに、利休は1色の花を、1,2本用いてかろやかにいけたものが好ましいと言葉を残したとされています。

つまり、赤や黄色の花を色とりどりに合わせるのではなく、
1種類の花を主役にして、あとは草物や枝物で数少なくまとめるということです。

禁花 いけてはダメな花がある?気を付けたい3つのポイント

茶花にはいけないほうがよいとされる花があります。それらは禁花と呼ばれ、歌で残っています。

「花入れに入れざる花は沈丁花(じんちょうげ) みやましきみに鶏頭(けいとう)の花」
「女郎花(おみなえし) ざくろ 河骨(こうほね) 金銭花(きんせんか) せんれい花も嫌なりけり」

これらの花はなぜ好まれまいのか?

それは茶花が以下3つの点を大切にしているからです。

  1. 季節感
  2. 香り

1,季節感

茶道では季節感を大切にしています。そのためその季節に合った花、もしくは少し季節が先の花(走り)を用います。

季節が遅れているものや、狂い咲きや返り咲きのように1年のうちに何度も咲いたり、季節外れで咲く花は好まれません。

そのため花屋などで一年中手に入りやすいような洋花はあまり使われません。

2,色

木と土、紙で作られた落ち着いた色合いの狭い茶室に、赤色の大きなバラがいけられていたらどう思いますか。

きっととても目立ってしまうことでしょう。

そのため茶花ではけばけばしいは好まれず、
白色などの落ち着いた色のものが好まれる傾向があります。

(赤色の花でも、あくまでその空間や季節に合っていれば問題ありません。)

上の歌でいうと、ざくろやケイトウが当てはまります。見た目が生々しいものも好まれません。

3,香り

花が咲くと、とても良い香りがするものがありますね。沈丁花は春に開き、良い香りで町中が満たされます。

しかし、狭い空間の茶室では、主役はお茶です。お茶の繊細な香りを邪魔しないように、香りの強い花は避けなくてはいけません。

上記以外にも、
女郎花や、河骨など漢字の雰囲気がよろしくなく感じられる花も避けられます。

いけてはいけない花として歌を例に挙げましたが、河骨、女郎花などは現在よく使われています。
禁花とされるものでも使い方次第で茶花になるのです。
上記の歌は、あくまで禁花のイメージとして留め置きください。
なんだか決まりが多いと思われるかもしれませんが、茶室にあったらどうかな?とイメージすれば、わかりやすいかもしれません。

「真・行・草」茶花には3つの格がある

お花と花入れだけでは床の間におくことができません。

花入れには薄板(うすいた)という板をしかなくてはいけません。

茶花を生ける際に注意しなくてはいけないのは薄板と、花入れの組み合わせです。

花入れ、薄板の両方ともに、真行草の3つの格で分類されています。

そして花を生ける際は、その両方の格を合わせていけるのが基本です。

真の組み合わせ

薄板:塗りの矢筈板(やはずいた)

矢筈板…板の端を横から見ると、矢羽根のように切り欠きがされた形になっています。

花入れ:青磁・染付・交趾・唐銅など基本的に唐から渡ってきたもの。

行の組み合わせ

薄板:塗りの蛤端(はまぐりば)

蛤端…板の端が閉じたハマグリの貝の端のように、滑らかにとがっている形です。

花入れ:釉薬のかかった焼き物
唐津焼、志野焼、織部焼、萩焼など

釉薬がかかっているため、塗りの薄板に乗せても薄板が傷つきにくくなっています。

草の組み合わせ

薄板:木地(漆を塗っていない)の蛤端、丸香台(まるこうだい)

丸香台…丸い形の薄板

花入れ:釉薬のかかっていない焼き物
伊賀焼・備前焼・信楽焼・丹波焼など

楽焼は釉薬がかかっていますが、草として扱われることが多いです。

また、竹や瓢でできた花入れも草に当たりますが、
流派によって竹花入れには薄板を使わないところもあるので注意が必要です。

籠花入れ
籠の花入れには薄板を使わない流派が多いです。畳にじかに置いて良いのです。
3種セットを見つけました。バラで買うよりお値打ちなのでご参考になさってください↓

茶花の基本形

茶花は野にあるように、その花の姿を尊重していけるため、あまり多く手を加えません。

生け花の流派によっては、茎や枝を折り曲げて、好みの形に成形していけることがあります。茶花においては基本的に手を加えずに花を生けます。

え?それでは自分の思った形にしたい場合はどうしたらよいのか、と思われると思います。

それこそが茶花の見どころなのです。

「茶花は足でいける」

という言葉があります。もちろん足の指を使うのではなく、自分で野山に出かけて、良いと思った姿かたちの一枝を摘んでくるのです。

なのでお茶会でお花を見るとき、亭主はこんな素敵な一枝を探してきたのだなと思えると、お花の鑑賞は楽しくなります。

お気に入りの一枝を見つければもうほとんど完成です。あとは花入れに入れるだけ。

しかし、誰しもが豊富に花材を持っていません。必要があれば、不自然にならない程度で成形することは仕方ありません。

奇数が大切?茶花の数字決まり事

  • 花の数
  • 葉っぱの枚数

はそれぞれ奇数にすることが決められています。

発祥の中国では奇数が陽の数字とされ、縁起が良いからと考えられています。

それに実際にいけてみると、花や葉が偶数だとバランスがとりずらく、いけるのがむずかしいものです。

茶花初心者におすすめの2つの花

季節ごとに違う花、こまかな決まり事が多く、いけるのはもうあきらめる!と思ってしまいそうですが、救世主の花があります。

それは「椿」・「むくげ」です。

椿

品種改良が進み様々な品種があり、開花期間が半年以上になります。それに野山や庭など比較的身近にあり、手に入りやすい椿をまず生けることで茶花の雰囲気を味わいましょう。

いけるときには、侘助などの小さな品種では、つぼみが開いているものを用いますが、
基本的につぼみを用います。

むくげ

むくげも同様に、夏ごろになるといたるところで見られます。

椿もむくげも、どちらも単体でいけられる花なので、良い姿だと思うものを一枝花瓶に差すだけでさまになります。

お茶の世界には、「冬の椿、夏のむくげ」という言葉があります。

迷ったときは冬には椿を、夏にはむくげを1本いければ良いとされているのです。

茶花の簡単ないけかた・まとめ

ここまでたくさんの決まり事がありましたが、実際にお花に触れて茶花をいけてみなければ納得できることばかりです。

いくつか簡単に茶花を生けているので、写真付きで記事にしています。

よろしければそちらもご参照ください。

最後までご覧いただきありがとうございました。

 

 

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